Liminal Zone

子どもの頃心底なりたかったひとたちがステージに立つ姿をみて、この瞬間に永遠に留まりたい、もう今夜くたばっても構わないって思ったけれど、それよりもまだ何度だって火を点けてど真ん中に突き刺してほしい。一等眩しい暗闇に遊ぶ不知火みたいでした。美しかった。

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自分が61になったとき、同じようにギラギラとか豹柄とか似合っていたいし興奮して一睡もできなかった!と言いたい。そしてバチバチで優雅で猥雑にとろけるように笑いたい。

 

あまりに今夜にぴったりなので、先日個人のかたから執筆をご依頼いただいた詩作品を公開いたします。
これはきっと今夜同じ場所、同じ時間に居合わせていたであろうあなたのために書いたもの。よい夜を。

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「Liminal Zone」 
                 嶋田紫文

朔は微笑む 
外連味をたたえて

それはワイルドハントを率いた
ひび割れる夜の警告

命脈を転がしている
理由を追い求めて

暮らすというより棲みついてた
テラリウムのなかで

多重録音の声で
人格線はぼやけていく

途切れ途切れにそれでもどこか 
永遠はあると言うけれど

孤独を手に入れて 
夢を見ている

今でも戸口に
一杯のミルクを忘れない

パラフィン紙の向こうがわを
隠れて覗きこんだ

目が合ってからは

誰にも教えたくなかった
抱きかかえて離さない

光芒は単音でくだる
遊びつかれるまで

空気のふるえを確かめてみる
ちぎれそうな歌が泣いていた

代わりに胸を壊して


欺くには柔らかすぎて
見えているものほど遠くなる

長い梯子 
波形に傷
それは脱境者の仕業

こびりついた影で
愛を試す
ばらけそうな愛で
影を壊す

彼方の影は
あとずさる
幻のように
燃えたままで美しく

朔は微笑む
外連味をたたえて
何度も此方に火を点ける