新作の詩です。ぜひご覧下さい。
「融点」嶋田紫文
お腹に猫を飼っている
その猫かばってまるくなる
猫背をなおしてと言う
兄のような人がいる
空気のふるえをたしかめたり
退屈そうにしてみたり
昼間の月よ
後ずさる夜よ
今日と明日のさかい目で
待ち合わせのリボンを結ぶ
それは触れれば
ほどけるぐらいのかたさ
まだ誰にも踏まれていない
雪を探しにゆく
古い友達に用もあったしね
忘れっぽくて
危なげで
似ても似つかぬ
影を揺らそう
この夜道よ
永遠に続け
頼りないハミングで
私の関心は
貸しっぱなしの本たちが
元気かどうかそれだけ
特別じゃなくて
夜に歩くのは
その輪郭に触れてみたかった
ただそれだけ