詩「Voyage Imaginaires」

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「Voyage Imaginaires」
嶋田紫文


行くばっかで帰れない
従属な時間に
白い虹が溶けている

荒れ野に分けいるたびに
パンくずをひとつ落とす

すぐに消えるような
目印を残す天邪鬼はだあれ

昼間の湯船
水晶に蝕まれた足を浸す

行けない海を眺めている
波の底にないものが欲しい

花の名の番地 
曲がり角で露を断つ

カシの古木にぶら下がる
その後ろめたさも誠実さも
他人にははかれない

またくしゃみひとつで
散らばるような
脆いところでねむる

だれの目の上にも
夜は等しく降りかかり
やさしいおそろしさを滲ませる

拙い音の運びが変調を重ね
捉えどころのない姿のまま
踊る影は遠く

漂流者の量子跳躍
見果てぬ旅に
くちづけを投げる