菫色のベールのむこう

愛書家のための服飾・小間物ブランドである霧とリボン様で注文させて頂いた、エミリーディキンソンの詩の新訳付作品集『Emily’s Herbarium』

花々の匂いを携えて今日、私の元へ届けられた。

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(実は私は霧とリボンさまが運営されている、「菫色連盟」精神のシスターフッド、パンキッシュなアカデミーを目指す社交クラブの連盟員でもある。)

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霧とリボンさまから届くお品は、いつも菫色の薄紙に包まれている。

私には不思議と菫色の薄紙が、もう一つの世界と俗世を隔てる限りなく薄い膜を想起させる気がした。

包みをひらくとき、薄紙を破いてしまわないよう、王冠を戴く時みたく姿勢を正して慎重に触れた。

作品集は細部まで美しくて、エミリーの大切な庭や温室の景色が浮かぶよう。ページの手触りが異なっているのも素敵でめくるのが愉しくなった。

 

エミリーディキンソンの詩は、自分の孤独や痛みを否定せず共存し暮らす、すこやかな空気が感じられるところが好きだ。

自分だけが持つ世界に、守られている感覚を忘れないでいられる。お守りみたいに思っている。

自分がただ家を建物だと思えば建物だし、聖域や城だと思えればその場所の意味や重みは変わる。変えられる。

ただ生きているだけで消耗してしまう、はみ出してしまう者にとって自分だけが持つ世界が支えとなる。作ることも守ることも自分にしかできない。

エミリーは自らの意思で、自分だけの聖域にこもることを選んでいたのかもしれない。

 

持病の影響で予定通りにできずに何度も色んな人に謝っては友人や機会を失くしてきたし、慣れても痛みは痛くないわけじゃないけれど

私の心身や頭に表れる症状はきっと、自分だけの世界を持ち続けるための抵抗なんだと思っている。

そう思えば歪な日々も身体も悪くないのかもしれない。

 

頭上に煌めく誰にも見えない王冠が

どうか、夜の長い季節を照らし続けられますように。